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ビズテク塾 【成果主義の誤解を解く】 (1) 結果でなく貢献度を測る

日経産業新聞2004年11月24日 26面
執筆者:桑畑 英紀

成果主義は本当に悪なのだろうか――。成果主義が批判されるとき、実際には「成果主義もどき」、つまり運用の失敗例が“成果主義”と して論じられることが多い。では、本来の成果主義とは何か。一言で表現すれば「組織や社員それぞれの貢献度に応じて処遇すること」である。「目標管理」を 基本に「職責グレード・職責別給与」といった制度を導入するのが一般的だ。さらにプロセス評価を目的としてコンピテンシー(行動特性)などを採用する例も 増えている。「頑張って大きな貢献をした人や組織には手厚い処遇で報いる」ことを旨とする。

「悪評等」の年功制度

成果主義の対極に位置するのが、「やってもやらなくても同じ」という悪平等システムだ。それは年功制において顕著である。明らかに自分より仕事をしていない 社員が、年長というだけで自分より優遇されていたり、同期というだけでほとんど処遇が変わらないことが当たり前になっている。努力をして大きな成果をあげ ている社員もそうでない社員も、横並びで処遇されるような会社で、頑張ろうという気持ちになるだろうか。有能で貢献度の高い社員ほどやる気を失うのは自明 の理だ。
年功的人事運用の外資系A社では、一定の勤続年数を超える社員はほとんど辞めない一方で、社歴の浅い社員の入れ替わりが激しい状況が続い ていた。優秀で高い成果をあげられる人材を中途や新卒で採用できてもなかなか定着しなかった。長期勤続の社員たちは貢献度や能力の割に処遇水準が高く、市 場価値との乖離(かいり)は大きかった。力のある新人が定着しない一方で、転職すれば必ず年収の下がる社員だけが勤め続け、昇給していた。このような長期 勤続の社員の多くは管理職であり、有能な新人は年功的処遇で冷遇されるだけでなく仕事の中でも失望し、有能な社員から早々に辞めていった。年功的な人事制度の会社では、貢献度が低いにもかかわらず管理職として厚遇される上司の下で、若いと言うだけで権限も処遇も与えられない有能な人材が悲痛な叫びを上げて いる。

「成果」の正しい定義を

まず重要なことは、成果の定義である。成果とは短期的・財務的業績だけではなく、組織業績に対する多様な貢献度のことである。成果主義よりむしろ「貢献度主 義」と呼ぶべきかもしれない。成果が単に短期的・財務的業績、つまりアウトプットだけだとしたら、それは、結果が悪ければすべてダメ、結果良ければすべて 良しという「結果主義」でしかない。一般に広まった成果主義の誤解を解き、本来の姿を正しく認識することが出発点となる。

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