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生き残る「言行一致」の会社 ― 組織変革の鍵とは何か(1/3)

日本人材マネジメント協会 会報誌「Insights」2007年4月 No.38
執筆者:桑畑 英紀
■ 「言っていること」と「やっていること」が違う

 「言っていることと、やっていることが違う」という状態が組織のあちこちに散見される会社は多い。いわゆる「Knowing and Doing Gap」というものだ。
 多くの会社で、企業理念、会社方針、ビジョン、改革のスローガンなどといったものが、格好良く美しい文言で表現されている。額に入れて飾られていたり、ポスターにして社内各所に貼られていたり、あるいはカードにして常時携帯が求められていたりする。はたして、こういう会社で、そこに謳われたとおりの行動が実践されている会社がどれほどあるだろうか。
 残念ながら、こうしたものは単なる公式の規範でしかなく、それを示して行動を求めるだけでは実践には結びつかない。それは、人々が行動の拠り所とするのは、暗黙知として共有された実質的な行動規範だからだ。そして、この暗黙知としての行動規範の集合体が組織文化である。
 多くの組織変革の失敗は、この組織文化に対する視点が欠如あるいは不足していたことが原因だと言われる。
 リエンジニアリングを行った1300社に対するグローバルな追跡調査では、85%の企業が失敗に終わっているという結果が出ており、その原因についても、組織文化変革に対するアプローチの有無が成否を分けたことがわかっている。(出所:CSC INDEX) その他、TQMやダウンサイジングなどといった経営改革の取り組みについての調査でも、組織文化に対する視点の欠如から、大半の施策が失敗に終わっていることが報告されている。
 つまり、どんなに立派な経営手法や戦略も、組織文化変革との統合なしには成功し得ないということである。「What」としての戦略を決めて、あとは「Just Do It!」では強い会社になることはできないのだ。
 経営手法、戦略、およびその実行プランを策定し、あとはただただ実行させる――。多少の違いはあっても、基本的にはこのやり方で、様々な経営手法や戦略が実行に移されてきた。
 リエンジニアリングであれば、「業務プロセスの根本的な再構築を行う」ことになる。会社として新たに目指す業務プロセスの在り方を定め実行を求めれば、社員はそのために必要な変革に取り組み、目指した業務プロセスへと変革を実現するのか――。残念ながら、現実にはそうならない。
 公式に設定される組織プロセスやシステムに変更が加えられ、予定されたカタチへと変わっていても、リエンジニアリングの成果として本来目指していた「生産性の向上」や「組織効率の向上」はとなると、その成果を実現できたケースの方が少ない。会社からの監視や指導が色濃くあるうちは指示に従っていたとしても、監視や指導が少なくなった途端に期待された行動は実行されなくなってしまう。原因は、当事者である社員達の意識や価値観つまり組織文化のレベルで変革しようとする視点と取り組みの欠如だ。

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